本を読んだきろく。

20代社会人の本を読んだきろくです。散文。

本きろく/神様ゲーム

神様ゲーム / 麻耶雄嵩

 

◎前半と後半の落差がすごい、読み終わった後あれこれ考えるのにおすすめな本

 

小学四年生の芳雄が住む町で連続猫殺害事件が発生。

芳雄たちが同級生で結成している探偵団で犯人探しをすることになります。
秘密基地に集まって会議したり、中学生に推理を頼ったり、この辺りは探偵団って感じで子供の推理物っぽいです。

 

それと同時に、芳雄はクラスメイトの鈴木太郎と仲良くなります。
鈴木太郎は自分を神様と言い、猫殺しの犯人も教えてくれます。
鈴木は嘘つきなのか、本当に神様なのか?
鈴木の存在がこの話をただの探偵団ものではなくしていきます。

 

そんなとき、芳雄たちは秘密基地で死体を発見してしまう…
殺されたのは?犯人は誰なのか?なんのために殺したのか?


この辺りから前半の猫殺し犯を探す探偵団ものという雰囲気は歪になっていきます。


そして神様を名乗る鈴木によって衝撃の犯人が明かされて…

 

児童向けの本らしいですが、教育に悪いので子供にはおすすめしません笑
犯人に驚いて、その先の真相にさらに驚いて、最後の1ページで目が点になりました。

しばらくはどういうことか分からなくて、色々考えたりレビューサイトさんなどを見て、考えがまとまってきたような感じです。

もやっとする終わり方ではあります。個人的な好みとしては、最後の犯人ははっきり知りたかった!

考察したりするのが好きな人は色々考える余地があって面白いですね。


鈴木の存在をどうとらえるか次第で読み方が変わってくると思います。


推理小説や探偵ものとはちがう、不思議な世界観でした。

 

 

 

 

※読後の方むけ
そもそもびっくりなのは、猫殺しはあんまり本筋に関係がないということ。
推理もののようなのに、鈴木という絶対的な神様が事実を知っている から、推理も意味がないということ。
主人公が本当の子じゃない、という話もストーリーに関わっているような、別にそうでもないような。

 

この話は芳雄の世界が神様と出会ったことで壊れていく話なんでしょうか。


親が実の親でないことを知り、自分は36歳で死ぬと知り、親友と絶交して親友が死に、好きだった子が親友を殺してその子自体も死に、父親を疑い、母親が死に…
鈴木の言葉を信じるなら母親は同性愛者でロリコンで殺人者というわけの分からないことに。


ミチルが芳雄の家のことをきいてきた→母親と関係があった


背が低いという描写→桶に隠れていた


ということなのかもしれませんがちょっと無理があるような気も…。でも鈴木が正しいと仮定するなら真実になんですよね。

 

ものすごく鬱展開。しかもこれ、続編あるとのことで調べてみたら芳雄は全く出てこない…
いったい芳雄はこの先どうなってしまうのか。1番心配ですね。

 

続編も面白そうなのでまた読みたいと思います!

本きろく/悪いものが、来ませんように

悪いものが、来ませんように / 芦沢央

◎一気に読みきるのがおすすめ、さらっと読める本


絶対だまされて読み返します!という帯に惹かれて購入。
見事にだまされました。
そして読み返しました。
だまされたことに気づいてからもページをめくる手が止まらない。

面白かったです。



助産院に勤める紗英、子供の頃から近しい存在の奈津子。
お互い既婚で奈津子には子供もいるが、二人はかなりの仲良しのようで夜勤明けの紗英を奈津子が迎えに行き一緒に昼食をとって昼寝をするほど。
女同士の友情が絡む話なのかな?
と仲良すぎる描写に少し違和感。
でもこんな気兼ねない存在がいるのっていいな。


そして章間で唐突に挟まれる、紗英の元彼の証言。
なんだか物騒な事件を匂わせており、
あれ?どういうこと?
と頭をひねります。
ここから少しずつ小説の世界に引き込まれていきます。


紗英や奈津子の視点で語られるある事件が起こるまでの話と、事件後の周辺の人々の証言が交互に出てきて、時間軸をいったりきたりしながら、ちょっとずつ出来事の全貌が明らかになっていきます。




読み進めていくうちに徐々に違和感が強まっていきます。
辻褄が合わないところが出てきて、なんでわざわざこの発言を?おかしいなと思いながらも何でか分からない。

それであるところで急にあ?!と思います。
皆さんどの辺りで気づくのでしょうか…

私は、鞠絵の証言のところでした。


読み進めるうちに真相がわかり、プロローグはそういうことだったのか、冒頭のあれは、このシーンは、と次々とつながる感じ。
これは気持ちいい。
最後の種明かしではさほど驚きませんでしたが、前半は見事にだまされました。

ハッピーエンドではないけれどなんとなく希望の残る終わり方でした。
タイトルの意味がわかり、その言葉に込められた願いとか思いを色々感じます。

中盤は暗い展開ですがさらっと読みやすくて驚きもあって、読後感も鬱々としてなくてよかったです。
外で読んでも大丈夫。



※ネタバレ 読後の方むけ


助産院で働きながら不妊というヒミツを抱える紗英。
不妊のことは奈津子にも言えず、徐々に子供のできた昔の同級生とは疎遠になっており、夫も浮気をしていて…紗英の鬱屈とした悩みは読んでいて辛いものがありました。
でもこの物語の救いは、紗英がそれほど悩んでいたのは夫を好きだったから。ってとこですかね。逆にいうとそれが悲劇でもある。

奈津子は紗英が夫を殺したいと思っていると勘違いしてしまったから…

紗英を思うがためにしてしまって行動。母親としての愛。


そんな奈津子もまた、母親の影にとらわれて生きています。
自分の母のようにはならない、子供をちゃんと愛さなければという、呪縛。その愛が行きすぎてしまったのだと考えると、負の連鎖はずっと前からあったのですね…

後、奈津子の夫、多くは語られていませんがどうなんでしょう。
証言があまりにも他人的というか、妻が人殺して埋めたのに他人事感がすごい。ジャーナリストだからとか関係あるのか?
逆に鞠絵の証言はぐっとくるものがありましたね。


ちなみに 個人的に紗英の夫、大志が愛人との子供を認知してくれと笑いながら言ってきたシーンが一番ムカつきました笑 そんな大志を好きなのと泣く紗英にちょっと共感できなかったのは仕方ないはず!