本きろく/悪いものが、来ませんように
悪いものが、来ませんように / 芦沢央
◎一気に読みきるのがおすすめ、さらっと読める本
絶対だまされて読み返します!という帯に惹かれて購入。
見事にだまされました。
そして読み返しました。
だまされたことに気づいてからもページをめくる手が止まらない。
面白かったです。
助産院に勤める紗英、子供の頃から近しい存在の奈津子。
お互い既婚で奈津子には子供もいるが、二人はかなりの仲良しのようで夜勤明けの紗英を奈津子が迎えに行き一緒に昼食をとって昼寝をするほど。
女同士の友情が絡む話なのかな?
と仲良すぎる描写に少し違和感。
でもこんな気兼ねない存在がいるのっていいな。
そして章間で唐突に挟まれる、紗英の元彼の証言。
なんだか物騒な事件を匂わせており、
あれ?どういうこと?
と頭をひねります。
ここから少しずつ小説の世界に引き込まれていきます。
紗英や奈津子の視点で語られるある事件が起こるまでの話と、事件後の周辺の人々の証言が交互に出てきて、時間軸をいったりきたりしながら、ちょっとずつ出来事の全貌が明らかになっていきます。
読み進めていくうちに徐々に違和感が強まっていきます。
辻褄が合わないところが出てきて、なんでわざわざこの発言を?おかしいなと思いながらも何でか分からない。
それであるところで急にあ?!と思います。
皆さんどの辺りで気づくのでしょうか…
私は、鞠絵の証言のところでした。
読み進めるうちに真相がわかり、プロローグはそういうことだったのか、冒頭のあれは、このシーンは、と次々とつながる感じ。
これは気持ちいい。
最後の種明かしではさほど驚きませんでしたが、前半は見事にだまされました。
ハッピーエンドではないけれどなんとなく希望の残る終わり方でした。
タイトルの意味がわかり、その言葉に込められた願いとか思いを色々感じます。
中盤は暗い展開ですがさらっと読みやすくて驚きもあって、読後感も鬱々としてなくてよかったです。
外で読んでも大丈夫。
※ネタバレ 読後の方むけ
助産院で働きながら不妊というヒミツを抱える紗英。
不妊のことは奈津子にも言えず、徐々に子供のできた昔の同級生とは疎遠になっており、夫も浮気をしていて…紗英の鬱屈とした悩みは読んでいて辛いものがありました。
でもこの物語の救いは、紗英がそれほど悩んでいたのは夫を好きだったから。ってとこですかね。逆にいうとそれが悲劇でもある。
奈津子は紗英が夫を殺したいと思っていると勘違いしてしまったから…
紗英を思うがためにしてしまって行動。母親としての愛。
そんな奈津子もまた、母親の影にとらわれて生きています。
自分の母のようにはならない、子供をちゃんと愛さなければという、呪縛。その愛が行きすぎてしまったのだと考えると、負の連鎖はずっと前からあったのですね…
後、奈津子の夫、多くは語られていませんがどうなんでしょう。
証言があまりにも他人的というか、妻が人殺して埋めたのに他人事感がすごい。ジャーナリストだからとか関係あるのか?
逆に鞠絵の証言はぐっとくるものがありましたね。
ちなみに 個人的に紗英の夫、大志が愛人との子供を認知してくれと笑いながら言ってきたシーンが一番ムカつきました笑 そんな大志を好きなのと泣く紗英にちょっと共感できなかったのは仕方ないはず!